地図は、そこで終わっていた。
探検家のクレインは三十年間、世界中の白地図を塗り潰すことに人生を費やしてきた。アマゾンの密林、チベットの高原、南極の棚氷。行き着けない場所などないと信じていた男が、この島だけはどうしても見つけられなかった。
古い海図に、鉛筆で書き込まれた小さな三角形。余白には「ここから先、船は戻らず」とある。売り払われた船乗りの遺品の中から発掘した、その一枚の紙のために、クレインは全財産を注ぎ込んだ。
「馬鹿げた話ですよ」と、雇ったガイドのラモスは言った。「この海域に島などありません。わたしは生まれてからずっとここで漁をしている」
「だから面白い」
クレインはそう答えて、双眼鏡を目に当てた。ラモスは小さく舌打ちし、エンジンの回転数を上げた。
三日目の夜明けに、島は現れた。
霧の中から浮かび上がる緑の輪郭を見て、ラモスの顔から血の気が引いた。クレインは逆に、体中に電流が走るような興奮を覚えた。三十年間、ずっとこの感覚のために生きてきた。
「上陸します」
「待ってください」ラモスが腕を掴んだ。「わたしはここで待つ。報酬は要らない。ただ、早く戻ってきてくれ」
男の目に、純粋な恐怖があった。迷信深い土地の人間特有の、あの目だ。クレインは苦笑して、その手を払った。
砂浜に降り立ったとき、奇妙なことに気づいた。足跡がある。人間のものだ。しかも一種類ではない。無数の足跡が、密林の方向へ向かっている。だが、戻ってきた足跡がない。
クレインは手帳にそれを記録した。冒険家の本能が、胸の奥で何かを囁いていた。引き返せ、と。だが三十年間、その声を無視してきた。
密林に入ると、すぐに遺留品が目に入った。錆びたコンパス、朽ちたロープ、そして見覚えのある意匠の帽子。クレインは帽子を拾い上げた。英国王立地理学会の紋章。二十年前に消息を絶った、あの探検隊のものだ。
引き返そうとしたとき、足が止まった。
木々の向こうに、巨大な構造物があった。石造りの壁、蔦に覆われた塔。遺跡だ。未発見の、完璧な状態の遺跡。クレインの脚は、意志とは無関係に前へ進んでいた。
塔の入口に立ったとき、後ろで何かが動いた。
振り返ると、ラモスがいた。船に残るはずの男が、いつの間にか背後に立っていた。だがその表情に、恐怖はなかった。
「待っていました」ラモスは静かに言った。「三十七人目だ」
クレインは、砂浜の足跡の数を思い出した。
地図はいつも、島で終わる。島は終わらない。