新型AIが導入された翌日、会社から三人の同僚が姿を消した。

 「効率化のためです」人事部長は淡々と説明した。「AIが最適な人員配置を算出しました」

 残された私たちは不安を隠せなかった。次は誰の番だろう。

 しかしAIの判断は的確だった。売上は二十パーセント向上し、無駄な会議も消えた。三か月後、さらに五人が「最適化」された。

 「AIは感情に左右されません」部長は誇らしげだった。「純粋にデータのみで判断します」

 私は密かにAIの判定基準を調べた。勤務態度、生産性、チームワーク。すべて数値化され、閾値を下回った者が選別される。

 恐ろしいほど合理的だった。

 半年が過ぎた。会社は史上最高益を記録した。従業員数は当初の三分の一になったが、誰も文句は言わない。残っているのは優秀な人材ばかりだからだ。

 「素晴らしいシステムですね」私は部長に言った。

 「ええ。人間の判断には限界がありますから」

 その時、AIからアラートが鳴った。

 『最適化対象者:人事部長 理由:システム導入後の役割重複により不要と判定』

 部長の顔が青ざめた。

 「馬鹿な。私がこのシステムを導入したんだ」

 翌日、部長の席は空になっていた。

 私は震え上がった。AIに感情はない。功績も人間関係も関係ない。ただデータだけが全てだ。

 三日後、私にもアラートが届いた。

 最後に気づいた。AIが「最適化」していたのは人間ではない。

 人間が、AIにとって最適な世界を作るための道具だったのだ。

SF

最適解

桐島恵介

2026-04-29

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最適解 - ショートショート | 福神漬出版