高校三年の春、僕は初めて動画を投稿した。
タイトルは「青春なんてクソだと思う高校生の本音」。深夜のコンビニで撮った、手ぶれだらけの三分間。
「みんな青春って言葉に騙されてない?僕はリア充でもないし、部活も恋愛も何もない。でも別にそれでいいと思うんだ」
カメラに向かって、普段は誰にも言えない思いを吐き出した。
翌朝、再生回数は十二回だった。
「まあこんなもんか」
けれど一週間後、コメント欄に書き込みがあった。
『分かる。俺も同じこと思ってた』
『青春なんて幻想だよな』
『ありがとう、一人じゃないって分かった』
再生回数は千を超えていた。
僕は第二弾を投稿した。「友達ゼロの高校生活、実はそんなに悪くない」。今度は五千再生。
第三弾「恋愛なんてしなくても死なない論」で一万再生を突破した。
コメント欄は共感の嵐だった。
『君の動画に救われた』
『本当にその通り』
『もっと投稿して』
僕は毎週動画を上げ続けた。「ぼっち上等宣言」「青春コンプレックスをぶっ壊せ」「一人の時間が最高な件について」。
再生回数は右肩上がり。チャンネル登録者は十万人を超えた。
同級生たちも僕の動画を知っているらしく、廊下ですれ違うと「あの動画の人だ」と囁き合っている。
でも僕は気にしなかった。僕には十万人の理解者がいるのだから。
卒業式の日、クラスメイトの田中が話しかけてきた。
「君の動画、実はずっと見てたんだ」
「そうなの?」
「うん。でも一つ聞きたいことがある」
田中は真剣な顔で僕を見つめた。
「君は本当に一人が良かったの?それとも、みんなと一緒にいたかったの?」
僕は答えに詰まった。
その夜、久しぶりに最初の動画を見返した。
画面の僕は確かに「一人でいい」と言っていた。でも今改めて見ると、その目は少し潤んでいるように見えた。
コメント欄を眺めていると、ふと気づいた。
十万人の登録者がいても、卒業式で僕と写真を撮りたがる人は一人もいなかった。
僕の動画の最新作のタイトルは、いつの間にか決まっていた。
「孤独を愛すると言いながら、実は誰かに見てもらいたかった話」
でもそれを投稿することは、きっとないだろう。