山田は配給券を握りしめ、列の最後尾に並んだ。今日は火曜日。肉の日だ。
前の男が振り返る。
「新顔だな。何番だ?」
「一七八九です」
男は眉をひそめた。
「随分と若い番号だ。俺は三万を超えてる」
山田は首をかしげる。番号が若いほど後ろに並ぶのがルールなのに、なぜ不思議そうな顔をするのか。
やがて配給が始まった。係員が声を張り上げる。
「三万五千番台の方から順番に!」
列がゆっくりと進む。山田の番はまだ先だ。
隣の女性が小声で呟く。
「最近、若い番号の人が増えたわね」
「そうですね」山田は相槌を打つ。「僕も先週からなんです」
女性の顔が青ざめた。
「先週から?まさか」
山田は配給券を見直す。確かに一七八九と印字されている。発行日は七日前。それがどうかしたのか。
ようやく山田の順番が回ってきた。係員が配給券を受け取る。
「一七八九番ですね。確認します」
係員はリストをめくり、指で行を追う。そして顔を上げた。
「山田太郎さん。間違いございませんね?」
「はい」
係員は奥から小さな包みを持ってきた。肉にしては軽そうだ。
「こちらがあなたの分です」
山田は包みを開けた。中身は肉ではなく、小さな金属片だった。
「これは何ですか?」
「識別タグです。あなたが来週の配給対象ですので」
山田は理解した。番号が若いほど新鮮だった理由を。