古い地図収集家の西村は、骨董市で奇妙な羊皮紙を見つけた。地形は見覚えがあるが、そこに記された地名は現在と全く違っている。
「これは江戸時代の測量図ですね」古地図商の老人が言った。「ただし、妙な点があります。通常なら存在しない建物が描かれているんです」
確かに、山間部に巨大な円形の建造物が記されている。現在その場所には何もない。西村は興味を抱き、翌日その地点へ向かった。
GPSを頼りに山道を進むと、予想通り何もない平地に出た。しかし足元をよく見ると、規則正しく並んだ石の列がある。
「誰かいませんか」突然、声が聞こえた。
振り返ると、作業服の男性が立っている。
「すみません、この辺りで何か工事でもしていましたか」西村は尋ねた。
「ええ、大規模な発掘調査です。三年前から続けています」男性は汗を拭いながら答えた。「古代の遺跡が見つかりまして」
西村は地図を見せた。「これに描かれた建物と関係がありますか」
男性は地図を見て驚いた。「これは正確ですね。我々が発掘した遺跡の配置と完全に一致しています。どこで手に入れたんですか」
「骨董市で。江戸時代の測量図だそうです」
「江戸時代?」男性は首を振った。「この遺跡の年代は縄文時代です。三千年前のものですよ」
西村は困惑した。なぜ江戸時代の地図に、地中に埋もれた古代遺跡が正確に記されているのか。
「実は他にも不思議なことがありまして」男性は続けた。「この遺跡、我々が発掘する前の航空写真には何も写っていないんです。でも掘ってみると、確実にそこにある」
西村は背筋が寒くなった。地図をもう一度見返すと、隅に小さく日付が記されている。
「明日」の日付だった。