数学教師の堀内は、テスト返却の朝、奇妙な違和感を覚えていた。
生徒たちの答案を眺めながら、首をかしげる。どの問題も、間違いの傾向が妙に統一されている。計算ミスの箇所、公式の取り違え方、グラフの読み間違いまで、まるで示し合わせたかのようだった。
「先生、今回難しかったです」
前の席の田中が振り返って言った。
「そうか。でも君たちなりに頑張った跡は見えるよ」
堀内は微笑んだ。実際、解答の過程は丁寧で、途中までは正しい道筋を辿っている答案が多い。
「みんな、同じところで躓いているんですね」
田中の隣の佐藤が苦笑いを浮かべる。
「ああ、それは気づいていた。でも心配いらない」
堀内はテスト用紙の束を整えながら続けた。
「間違いのパターンが似ているということは、理解度が同程度ということだ。一人だけ飛び抜けて悪いということもない」
チャイムが鳴り、ホームルームが始まる。
「それでは返却します。平均点は68点でした」
生徒たちがざわめく。予想よりも高い数字だった。
一枚ずつ名前を呼んで手渡していく。みな似たような点数で、大きなバラつきはない。最後の一枚を手に取った時、堀内の手が止まった。
そこには真っ赤な丸印がずらりと並んでいる。100点満点。
名前を確認し、堀内は教室を見回した。
「えーと、田中君」
「はい」
田中が手を上げる。その表情に、困惑の色が浮かんでいた。
堀内は答案を手渡しながら呟いた。
「君だけ、全問正解だったんだが」
田中の顔が青ざめる。教室がしんと静まり返った。
堀内はようやく理解した。生徒たちの「間違いの統一性」の意味を。
「まさか、君以外の全員でカンニングを?」