会議室の円卓に、五人の男が座っていた。
「では、始めましょう」田中が口火を切る。「今回の案件は、例の通り多数決で決めます」
佐藤が資料をめくった。「候補は三人。山田、鈴木、それから高橋です」
「山田はどうでしょう」田中が問いかける。
「家族構成が理想的ですね」佐藤が答える。「妻と子供二人。住宅ローンもある。失うものが多い」
「反対」渡辺が手を挙げた。「前回も似たようなタイプでした。変化がありません」
中村がうなずく。「確かに。もう少し工夫が欲しいところです」
「では鈴木は?」
「独身、三十五歳」佐藤が読み上げる。「趣味は登山。体力には自信がありそうです」
「面白そうですね」小林が初めて口を開いた。「前回の教師、前々回の会社員とは全く違うタイプです」
「でも単調になりませんか?」渡辺が眉をひそめる。「一人だと、どうしても会話が限られます」
「それもそうですね」
田中が時計を見た。「時間もありません。高橋はいかがでしょう」
「これは興味深い」佐藤の声が弾んだ。「妻と別居中。借金もある。おまけに持病持ちです」
「複雑な背景ですね」中村が感心する。「心理的な描写に深みが出そうです」
「賛成の方は挙手を」田中が呼びかける。
五人全員の手が上がった。
「では、高橋に決定です」田中が立ち上がる。「皆さん、お疲れ様でした。明日の撮影、よろしくお願いします」
会議室を出た五人は、それぞれ別々の車で帰路についた。誰も振り返ることはなかった。
翌朝、高橋の自宅に届いたのは、五億円の宝くじ当選通知書だった。