スーパーの見切り品コーナーで、田村は不思議な割引シールを見つけた。
黒地に金の文字で「50%OFF」と印刷されている。しかし、どの商品にも貼られていない。床に一枚だけ落ちていた。
「これ、落ちてましたよ」
田村がレジの女性に声をかけると、彼女は首を振った。
「うちではそんなシール使ってません」
妙だな、と思いながらも田村はシールをポケットに入れた。家に帰ってから、ふと鏡を見ると額にそのシールが貼ってある。
いつの間に、と剥がそうとしたが取れない。しかし翌日には消えていた。
その日から田村の人生は変わった。家賃が半額になった。大家が計算を間違えたという。電車代も半額。定期券を買い直す必要があると駅員に告げられた。給料も、なぜか半分になっていた。
「人件費削減で」と上司は申し訳なさそうに言った。
田村は気づいた。シールは商品の価値を半分にするのではない。
鏡の中で、またシールが額に貼られているのを見つけた時、田村は理解した。一日ごとに自分という商品の価値が半分になっている。
今朝、鏡に映った自分の体は透けていた。
明日の朝、鏡には何も映らないだろう。