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ダークファンタジー

割引シール

黒木静香 | 2026-03-31

スーパーの見切り品コーナーで、田村は不思議な割引シールを見つけた。

 黒地に金の文字で「50%OFF」と印刷されている。しかし、どの商品にも貼られていない。床に一枚だけ落ちていた。

 「これ、落ちてましたよ」

 田村がレジの女性に声をかけると、彼女は首を振った。

 「うちではそんなシール使ってません」

 妙だな、と思いながらも田村はシールをポケットに入れた。家に帰ってから、ふと鏡を見ると額にそのシールが貼ってある。

 いつの間に、と剥がそうとしたが取れない。しかし翌日には消えていた。

 その日から田村の人生は変わった。家賃が半額になった。大家が計算を間違えたという。電車代も半額。定期券を買い直す必要があると駅員に告げられた。給料も、なぜか半分になっていた。

 「人件費削減で」と上司は申し訳なさそうに言った。

 田村は気づいた。シールは商品の価値を半分にするのではない。

 鏡の中で、またシールが額に貼られているのを見つけた時、田村は理解した。一日ごとに自分という商品の価値が半分になっている。

 今朝、鏡に映った自分の体は透けていた。

 明日の朝、鏡には何も映らないだろう。

493文字 | 完結
割引シール - ショートショート | 福神漬出版