魔法学院の最上階から、街に向かって飛び立つ生徒たちを眺めるのが日課だった。
今日で教師生活も終わる。四十年間、この学院で魔法を教え続けてきた。
「先生、お疲れさまでした」
最後の生徒が挨拶をして教室を出ていく。窓の外では、彼らが箒にまたがって空を舞っている。
私は机の引き出しから、古い手鏡を取り出した。入学当時から持ち歩いているものだ。鏡面には細かい傷が無数についている。
「魔法の基本は想像力です」
何度この言葉を口にしただろう。生徒たちは皆、熱心に聞いてくれた。
杖を振る。呪文を唱える。光の玉が宙に浮かび、ゆっくりと回転する。
「素晴らしい魔法ですね」
いつも生徒たちはそう言ってくれた。私の魔法を見て、目を輝かせてくれた。
教室の黒板には、最後の授業で書いた文字が残っている。「魔法は心の中にある」。
私は立ち上がり、荷物をまとめ始めた。四十年分の思い出が詰まった教材や資料。すべてを段ボール箱に入れていく。
ふと、手鏡を見つめる。そこに映る自分の顔は、皺だらけになっていた。
学院長が教室に入ってきた。
「長い間、本当にありがとうございました。先生の授業で、多くの生徒が魔法の素晴らしさを学びました」
私は微笑んで頷いた。
「ところで」学院長が続ける。「先生は魔法が使えないのに、よく四十年もこの仕事を続けられましたね」
私は手鏡をそっと箱に入れた。