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ファンタジー

最後の授業

水無月透 | 2026-03-30

魔法学院の最上階から、街に向かって飛び立つ生徒たちを眺めるのが日課だった。

 今日で教師生活も終わる。四十年間、この学院で魔法を教え続けてきた。

 「先生、お疲れさまでした」

 最後の生徒が挨拶をして教室を出ていく。窓の外では、彼らが箒にまたがって空を舞っている。

 私は机の引き出しから、古い手鏡を取り出した。入学当時から持ち歩いているものだ。鏡面には細かい傷が無数についている。

 「魔法の基本は想像力です」

 何度この言葉を口にしただろう。生徒たちは皆、熱心に聞いてくれた。

 杖を振る。呪文を唱える。光の玉が宙に浮かび、ゆっくりと回転する。

 「素晴らしい魔法ですね」

 いつも生徒たちはそう言ってくれた。私の魔法を見て、目を輝かせてくれた。

 教室の黒板には、最後の授業で書いた文字が残っている。「魔法は心の中にある」。

 私は立ち上がり、荷物をまとめ始めた。四十年分の思い出が詰まった教材や資料。すべてを段ボール箱に入れていく。

 ふと、手鏡を見つめる。そこに映る自分の顔は、皺だらけになっていた。

 学院長が教室に入ってきた。

 「長い間、本当にありがとうございました。先生の授業で、多くの生徒が魔法の素晴らしさを学びました」

 私は微笑んで頷いた。

 「ところで」学院長が続ける。「先生は魔法が使えないのに、よく四十年もこの仕事を続けられましたね」

 私は手鏡をそっと箱に入れた。

599文字 | 完結
最後の授業 - ショートショート | 福神漬出版